市区町村の判断の重要性

障害者自立支援法の中での市町村の位置づけ

障害者自立支援法は、身体障害者、知的障害者、精神障害者を対象者として一本に統合し、広域性のある一部の事業を除き、事業の実施主体者及び決定権を市町村に一元化しました。

そして最大の特色は、 障害者の自立と、障害者支援財政の立て直しを目的とするとして、利用者に一割の費用を負担させる応益負担 制度が取り入れられたところにあります。

事業の種類は、市町村の事業として「自立支援給付事業」と「地域生活支援事業」の二つの事業で構成されていますが、ここでは地域生活支援事業の市町村の判断の重要性について、検討します。

地域生活支援事業の目的

地域生活支援事業は、障害者及び障害児がその存する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるように、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な事業形態による事業を効率的・効果的に実施し、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とするとされています。

地域生活支援事業には、市町村が直接実施する8つの事業と、都道府県が分担して実施する三つの事業があり、市町村が実施する事業は次の通りです。

市町村が実施する事業

  1. 相談支援(関係機関との連絡調整、権利擁護等)
  2. コミュニケーション支援(手話通訳派遣等)
  3. 日常生活用具の給付又は貸与
  4. 移動支援
  5. 地域活動支援センター(創作的活動、生産活動の機会提供、社会との交流促進等)
  6. 福祉ホーム
  7. 居住支援
  8. その他の日常生活又は社会生活支援

さらに、専門性の高い相談支援などについては、広域性の見地から都道府県が実施することになっています。

都道府県が実施する事業

  1. 専門性の高い相談支援事業
  2. 広域的な対応が必要な事業
  3. 人材育成等。

市町村の判断の重要性

地域支援事業は、どれ一つをとっても、障害者の日常生活の便宜を図り、福祉の増進に資するとする目的に直結するものだけに、すべての決定権を有することになった市町村の判断は、利用者が受ける支援や給付内容を左右することになるだけに決定される前に意見を反映させることが大変重要になります。

きまりでは、あらかじめ住民の意見を反映させるものとするなどとして、「市町村は、市町村障害福祉計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする(障害者自立支援法、第八十八条)、などと規定されております。

計画への反映方法について

居住地の市町村が、事業の実施主体者になったことで、直接身近なところでいろいろな判断が下せることや、住民の意見を反映させる必要があるなどとするきまりもあるので、建設的な意見を積極的に市町村に提言してゆくことが大切になります。

それらの手段としては次のようなことが考えられます。

  1. 障害者の施設がない地域にあっては、障害のある人たちが、今もっとも必要としている、こんな施設やサービスをこんなときに利用したい、という具体的な基盤整備の内容を自治体や計画策定委員会に要望し、計画のなかに盛り込めるようにしていくこと。
  2. 市町村の障害者施策推進協議会や、策定委員会などの検討機関には、障害者団体や関係者の代表複数が委員として参画すること。
  3. 誰でも希望すれば会議を傍聴できるようにすること。
  4. 委員との懇談や学習の機会を積極的につくるようにしていくこと。
  5. 計画策定にあたっては、障害者のニーズを適切に把握させるため、アンケートやヒヤリングなどの実施を、市町村に要望していくこと。
  6. 障害当事者自身も障害者福祉のあり方やサービスの受けかた等について行政やサービス提供機関に自己の主張を訴えるとき、地域の福祉団体の支援を受ける事や将来の障害者福祉のあり方を互いに語り、議論するようにすること。

等々が考えられます。