音声読書器 用途別選択情報 (2023年12月現在)
概要
このページは、視覚障害者が用途やニーズに応じて文字認識と音声読み上げの機器やソフ トを選択するための情報を提供することを目的に作成しました。
これらの製品においては、どの機器やソフトウェアにおいても、読める印刷物と読めないものとが存在します。
また、読めたか読めなかったかという評価は、利用者側の感受性によって決定される面があることも否めません。
読めている箇所に焦点を当てれば「読めた」ことになり、うまく読めなかった箇所に焦点を当てれば「読めなかった」と解釈されます。
また、文字は読めていても、レイアウトや前後の関係から意味がよく判らないときは、「読めなかった」という気持ちになります。
さらに、製品によっては、操作方法の上手下手が読み取り精度に影響を 与えます。
このように、文字認識して読み上げる音声読書器の客観的評価は大変難しいため、こ のページで記述する内容は、アメディアの全盲スタッフ、望月優の主観的評価に基づ いています。
しかしながら、多様な場面で実際に機器やソフトを操作している全盲ユーザーのレポートですので、どの製品の個別ページの説明よりも、ユーザー感覚により近い情報であると確信しています。
製品別特徴紹介
クラウドサービスについて
快速よむべえ、よむべえスマイル、快速ヨメールには、 Google Cloud Platform(GCP)の有料サービスを利用した認識や翻訳等の機能が搭載されており、これらの精度は非常に高い。
これらの機能を表現するとき、GCP利用であることが判るように、「クラウド認識」、「クラウド翻訳」等と記述する。
用途別製品選択ポイント
印刷物の仕訳
最適品
快速よむべえ
全盲:読み上げモデルまたは一体モデル
強度弱視:拡大モデル
理由:これらの製品では、操作してから読み上げ始めまでの時間が短いため、同じ時間でより多くの書類の分類ができる。
弱視者の場合は、文字認識ができないときでも、拡大表示で分類できる可能性が高い。
上記2製品では、操作の熟練の程度によって印刷物全体を読むことができない場合がよく起きるが、分類は可能。
これら製品は、読み取りから読み上げ開始までの時間が非常に短いため、読み上げ開始後、その印刷物が何であるかが分かった瞬間に、その印刷物の仕訳は完了。
点字でラベルを貼るなり、捨てるなり、所定のクリアファイルに保管するなり、自分の整理整頓が短時間で行える。
適応品
よむべえスマイル
快速よむべえよりも速度が遅いが、分類は可能。
ちらしやカタログを読む
最適品
上記3製品は、A4サイズの用紙とスキャナーまたはカメラの位置関係を固定できるため、A4サイズのちらしやカタログの1面全体を一度の操作だけで読み取ることができる。
クラウド認識を利用すれば、ちらしやカタログはほぼどんなものでも読める。
上記3製品には、ページ補正機能とキー操作による段落(ブロック)読み飛ばし機能があり、読みの順番で理解しにくい場合でも、利用者側での努力の余地がある。
なお、意味不明な読み上げ部分は、絵や写真を無理やり文字認識しようとしている場合が多く、もともと気にしなくてもよい部分のことが多い。
動画:【快速よむべえ】クラウド認識で手強いダイレクトメールを読む
手書きを読む
最適品
いずれの製品でも、クラウド認識機能を使うことにより、手書き文字はかなり正確に読み上げられる。
動画:【快速よむべえクラウド認識】手書き
活字図書を読む
最適品
上記2製品は、カメラ型読書器。
クラウド認識を使って、「連続読取」機能で本を読み取れば、1冊の本を15分から30分ぐらいで機器内部に取り込むことができ、その後、1冊を最初から最後まで連続読みで聞くことができる。
「連続読取」は、ページをめくるごとにカメラの撮影が行われるため、利用者は、自分のペースで落ち着いてページを順番にめくっていけば良い。
1冊の本のデータは、まとまった一つの文書という単位で機器内部に保管される。この文書に図書の名前などからクリップして名前を付けることができるため、利用者は、機器を電子書棚として利用することができる。
なお、1ページずつ内容を確認しながら読んでいく人のために、別売の「ブック抑え」も用意されている。
部屋が暗いと認識精度が落ちるため、全盲の場合、部屋の電気がついていることに注意されたい。
適応品
スキャナー型の音声読書器であるよむべえスマイルは、快速よむべえ / ヨメールほど速く読み取ることはできないが、スキャナーで確実に読み取ることができる。
より正確に読むためには、クラウド認識を使うことをお勧めする。
よむべえスマイルでも、快速よむべえ / ヨメールと同様、本1冊分の内容を維持管理する文書管理機能が整っている。
レシートや不在表を読む
これらの書類は表を含む場合がほとんどで、表で表現されている関係性をわかりやすく読み上げる製品がないため、最適品と言えるものはない。
しかし、クラウド認識機能を使えば、文字自体は正しく読み上げるため、読み慣れれば理解できるようになる。
つまり、製品の区別よりも、利用者のあきらめない繰り返しによる読み慣れの方が重要である。
私は、ヤマトと佐川の不在表を快速よむべえのクラウド認識で読み取って、再配達を手配したことがある。
動画:【快速よむべえ】クラウド認識でレシートを読む
通帳を読む
通帳には、薄い模様が背景に入っており、文字認識事態が難しい。
また、金融機関によって、あるいは印字状態によって条件が異なるため、読める場合と読めない場合、理解できる場合と理解できない場合とが出てくる。
適応品
よむべえスマイルの「通帳スキャン」、快速よむべえの「クラウド通帳読取」機能で通帳を判りやすく読み上げることができる。
これらの機能では、単に文字認識しているだけでなく、利用者にとって重要な情報から提示するという工夫をしている。
つまり、最初に、スキャンしたページの最終残高を読み上げるなどの工夫がある。
読み間違いも多々起こることから、最適とまでは言えないが、唯一の適応品として位置付けられる。
動画:よむべえスマイルで通帳スキャン(ゆうちょ銀行)
動画:よむべえスマイルで通帳スキャン(三菱UFJ銀行)
動画:よむべえスマイルで通帳スキャン(三井住友銀行)
薬のパッケージや説明書を読む
最適品
クラウド認識機能を使うことにより、薬のパッケージに書かれている内容や、薬の箱の中に小さく折りたたまれている説明書をかなり正確に読むことができる。
なお、折りたたまれている薬の説明書は、広げて、別売の「レシート抑え」で抑えて読むことをお勧めする。
適応品
よむべえスマイルのクラウド認識機能でも、同じように読むことができる。
ただ、丸い薬の瓶に書かれている文字は、スキャナーでは読み取りにくい。
その変わり、薬の説明書は、折りたたまれているものを伸ばして、スキャナーのフタで抑えればよいので、こちらは便利である。
食品パッケージを読む
最適品
クラウド認識機能を使うことにより、食品パッケージの箱や袋に書かれている内容をかなり正確に読むことができる。 カメラで読み取るため、ペットボトルの側面に書かれている文字も読むことができ、ペットボトルを回転させながらそれぞれの面を読むことにより、食品についての必要な内容をほぼフルに理解することができる。
新聞を読む
新聞の不規則な段組みの順序を正しく解釈できる製品はひとつもないため、この用途での最適品はない。
しかし、文字自体はすべての製品で読めるため、すべてが適応品と言える。
については、一つの記事をあらかじめA4サイズ以内の大きさに切りぬいておけば、最適な状態を作ることができる。
なお、快速よむべえ、快速ヨメールで採用しているカメラは A3サイズでも読み取りできるが、新聞を A3サイズまで大きく広げて読み取ると、より多くの記事を一度にカメラで撮影してしまうため、この方法はお勧めしない。
名刺を読む
最適品
快速よむべえ
全盲:読み上げモデルまたは一体モデル
弱視:拡大モデル
快速ヨメール
上記製品は、カメラで読み取るので、もともと読み取り速度が速いが、名刺のような小さな印刷物の場合は、認識も速いため、さらに速度が速い。 ただし、クラウド認識を利用することをお勧めする。
内部認識エンジンの読取機能では、文字が小さすぎて読めないことがしばしば起きる。
適応品
よむべえスマイル
用紙は小さいが、読み上げ始めまでの時間はA4サイズの印刷物の場合とあまり変わらない。
OrCam MyEye2 / MyReader2
撮影の向きと距離感がつかめれば十分に使える。
出先で看板を読む
最適品
たまたま視野角度に入った看板を読み上げるため、視覚障害者にとっては、これまで知ることのできなかった世界を知ることができる。
なお、エンジェルビジョン・グラスリーダー、エンビジョングラス等でも上記製品と同様の結果が得られると思うが、筆者は検証していない。
翻訳する
最適品
上記製品には、クラウド翻訳機能があり、非常に高い精度の翻訳が得られる。
快速よむべえとよむべえスマイルでは、日本語、英語、中国語簡体字、中国語繁体字、ハングルの5種類間での相互翻訳ができる。
快速ヨメールでは、日本語と英語の間での相互の翻訳ができる。
なお、快速よむべえ、快速ヨメールの「連続読取翻訳」機能を使うと、本1冊を短時間でまるごと翻訳して機器内部に保管できる。
動画:【快速よむべえクラウド翻訳】英語
動画:【快速よむべえクラウド翻訳】中国語