障害者の仲間の皆さん、全盲の望月優です。
障害者自立支援法が可決して、これからサービスの1割負担が原則になります。
でも、考えてみてください。1割負担ということは、9割は誰かが代わって支払ってくれているのです。
それは、国民みんなです。
もっと判り易くいうと、町で出会う普通の人達、目の見えない私に声をかけずにすーっと通り過ぎてしまう「冷たい」かも知れない皆さんが、私達のために9割も費用負担してくれているのです。
私は今47歳ですが、20代前半の頃から障害者運動にのめり込んできました。
一般中学校に車椅子の障害者の入学を認めない教育委員会に講義して、委員会室のある市役所の中に乱入して夜中まで立てこもったこともあります。
点字受験を認めない大学の学長室にいきなり抗議文を持って押しかけたこともあります。
そんな乱暴者の私でしたが、当時の福祉は大変未熟で何の有効な援助政策もなく、且つ障害者への差別的感覚が常識ベースとなっていろいろなことが決められていたと今でも感じます。
一方、現在はどうでしょうか。
あらゆる面で障害者への援助政策が充実してきて、20年・30年前からは考えられないほど、障害者そして福祉関係者は優遇された状態になっています。
そんな中、1990年代始めにバブルがはじけ、早く切り詰めた生活に戻さないと大変なことになる状況だったのに、豊満太りした私達国民はなかなかダイエットできず、国の借金はみるみる膨らんでしまいました。
この贅沢に太った私達の付けは誰が支払うのでしょうか。
若い人達です。
障害者ということで言えば、若い障害者達、まだ小さな子供かこれから生まれてくる障害者達なのです。
ここ20数年で急激に優遇状態になった私達障害者は、子供の障害者、これから生まれてくる障害者のことを考えなくて良いのでしょうか。
そんなはずはありませんね。
ならば、私達現代に生きる障害者は、障害者の後輩のためにも、経済的に一歩でも自立する生活に向けて、グンと踏み出すべきなのです。
この自立へのステップは進歩への道です。且つ、幸福への道です。
今、道行く一般の人達は、20年・30年前に比べればはるかに親切で友好的になっています。
私が一人で歩いていると、「なぜ見えない人に一人で歩かせるのかしら。親の顔が見たいわ」などとおっしゃるおばさんが20年前にはいました。
今はそんな人は一人もいません。
私が信号の前で立っていれば、「青になりました」と声をかけてくれる方が大変増えています。
そして、そのような一般の人達が、私達が受ける福祉サービスの費用の9割を負担してくれているのです。
私達障害者は、この人達に感謝しつつ、さらにこれらの一般の人達との交流を進めようではありませんか。
福祉関係者とだけ付き合っていてはいけません。
福祉関係者は利用者負担が導入されると、自分達の事業が苦しくなるからみんな今回の自立支援法に反対します。
それは私も福祉関係の製品を販売しているから、身をもって判ります。
彼らに洗脳されてはいけません。
私達障害者の生活を本当に支えてくれているのは、その辺に歩いている知らない一般の人達なのです。
だから、一般の人達と交流して仲良くなりましょう。
そのとき、
「私達も1割は負担して頑張っているんだよ」
「でも、9割も負担してくれて本当にありがとう」
という気持ちを持って接すれば、どんな方とも仲良くなれるはずです。
ノーマライゼーションや自立は、普通の人達と接するところから始まります。
福祉関係者の役割は、障害者と普通の人達との掛け橋になることであって、障害者を囲い込んで保護することではないはずです。
もちろん、そのことをよく理解して頑張ってくれている福祉関係者もたくさんいます。
でも、もしもあなたの近くの先生、ご両親、カウンセラーそして施設の職員など、あなたに関わる近くの人達があなたが一般の人と交わろうとするのを妨げるようであれば、彼らを突き飛ばしてでも外に出て、一般の人達と接するようにしましょう。
今、ユニクロでもスターバックスでも障害者を雇用しています。
社会や一般の人達は、私達障害者に確実に歩み寄ってきてくれています。
あなたが自ら外に踏み出せば、必ず一般の人達との楽しい交流が生まれ、そこから経済的自立へのチャンスも到来します。
2005年11月3日 望月優