主催:JHC板橋会・ワーキングトライ
企業向け普及啓発セミナー
10月24日(金)
東京芸術劇場にて
障害者雇用へのアプローチ
1.アメディアとは
1989年に設立し、視覚障害者向けのシステム開発・販売を行なっています。
現在は、音声拡大読書機「よむべえ」を中心に展開しています。
資本金3200万円、従業員数12名、年商2億5千万円規模の会社です。
障害者は視覚障害のプログラマーとMさんともう一人、パートの精神障害の方の3名です。
そのほかに、視覚障害者にライティングや録音マニュアルの作成、英日翻訳を外注しています。
2.Mさん採用に当たって留意した点
基本的に、Mさん本人の希望とワーキングトライのアドバイスに従いました。
もともとメルマガの編集という仕事柄、在宅でもできると考え、在宅で作業してくれる人を募集していました。
しかし、アドバイスに従って、通勤していただくこととしました。
3.経過の中で留意した点
Mさんを特に障害者として位置付けるのではなく、仕事をする一人の仲間として位置付けました。
当初はメルマガ編集の仕事だけでしたが、
- 機器の組立
- ホームページ制作
- ブログの設置とカスタマイズ
などと、本人の希望を聞きながら、カバーする業務を増やしていきました。
今では、
- 点訳
- 発送業務
- 電話応対
- 接客
- 展示会でのデモ
など、業務領域をどんどん増やしています。
4.社内の雰囲気の変化
最初はMさんが一人で沈黙して仕事をしている状態でしたが、徐々に一人一人の社員と言葉を交わすようになりました。
この流れは、ほかの社員が入社したときでも基本的には同じです。
今では、業務領域が増えたこともあって、いろいろな社員と連係して楽しそうに仕事をしています。
5.ワーキングトライと関わっての感想
ワーキングトライさんの仲介とアドバイスがあったお陰で、Mさんとの関係をスムーズに保つことができていると感じています。
Mさんの方でも、ワーキングトライさんに相談することによって、課題の整理をつけていることがしばしばあるようです。
また、実は、Mさん以外の社員がウツになって出社できなくなったことがあり、そのときには私がワーキングトライさんに相談させて頂きました。
6.企業へのメッセージ
「障害者」というと、
- 何ができるのだろうか
- 周りの人達とうまくやっていけるのだろうか
という不安が皆さんの中にあるのだろうと思います。
人を採用しようとするとき、
A.やって欲しい仕事がある。
B.その仕事ができる人を探す。
C.その見つけた人の中から、仲間の社員との連係で生産性が高くなる人を選ぶ。
というプロセスになるかと思います。
「障害者」と言っても、実は個々人で性格も違いますし能力も異なります。
B.のプロセスの「その仕事ができる人」に障害のある人が当てはまることは少なくありません。
例えば、ホームページ制作なら車椅子に乗っている人でもできます。精神障害の方でもできます。
画像加工なら、耳の聴こえない人でもできます。
清掃や封入などの作業は、知的障害の方もできます。
視覚障害者の中にはその障害とは全く関係なく、魅力ある文章が書ける人や英語その他の外国語ができる人、作曲や楽器演奏ができる人などがかなりいます。
このように、仕事の角度から障害者をみたとき、その仕事ができる障害者はいくらでもいるのです。
後は、C.のプロセスでチームとしての生産性がより向上するように仕組み作りするだけです。
これは、マネジメントの分野に入り、障害者を交えたチームでの生産性向上を目指すことは、企業体質を強化します。
「ダイバシティ・マネジメント」の考え方では、
抵抗→同化→分離→統合
という段階を踏んで異種の人達をマネジメントする体質が強化されていくと言われています。
「抵抗」は、障害者をまだ一人も雇用していない、雇用することに腰を引いている企業の段階です。
「同化」は、会社は特別なことは何もしないけれども、あなたの方で頑張って同化してくれるなら当社にきてください、という会社の段階です。
「分離」は、障害者の個性や特徴を分析して、その障害者にあった仕事を与えている会社です。
「統合」は、分離から一歩進んで、障害者を交えたチーム全体を一つの行動組織体として考え、その組織体が最高の生産性を上げるように従来の業務フローをより良いフローに組替えた上で障害者を溶け込ませる会社です。
「統合」の段階に達している会社は非常に少ないと思いますが、会社も人もステップを踏んで進歩していくものです。
「同化」は良い会社かどうかという視点ではかなり未熟な段階だと思いますので、短期間で同化を経て、分離の段階にまで速く進歩してくださることを期待しています。
本日のセミナーのタイトルは、見直そう!わたしにできる障害者雇用ということですが、これは障害者の就労支援団体が主催しているからそういうタイトルになっているのであって、企業側としては、「障害者を雇用すること」を目的化する必要はないはずです。
実際には、障害者と言えども素晴らしい労働資源なのです。
業務プロセスの最適化を常にはかり、個々の社員が最適な状態で連係して楽しく働ける職場を目指していれば、おのずと障害者も有力な労働資源になるのです。
ということで、最後に、提案があります。
求人広告を出すとき、「障害者・外国人OK」と書いて出してみてはいかがでしょうか。
求人誌やインターネットの求人情報をみて申し込んでくる障害者は非常に働く意欲のある障害者です。
障害を隠して申し込んでくるようなことも起きません。
さらに、「障害者・外国人OK」という記述は、障害者でない求職者にも「よい会社だ」というイメージをもたらすため、より前向きで有能な人達が集まってくるものと思います。
このように、皆さんの一般求人に障害者も含める考え方を一つの柱に立てていただければと思います。