事業者から見た視覚障害者雇用の現状と課題

2004年3月26日

独立行政法人 障害者職業総合センターにて
株式会社アメディア 代表取締役 望月 優

(1) 事業主から視覚障害従業員に求めるべきこと

1. 戦力としての視覚障害者雇用

戦力として期待していることを伝える必要があります。

会社の戦力となることによって、長期的な雇用関係が成立します。

長期的な雇用関係は、他の従業員も納得できる処遇でもってはじめて実現できます。

仮に事業主が視覚障害者従業員に対して特別な思い入れがあったとしても、その人が戦力になっていない限り、やがてほかの従業員との人間関係の中でその「特別な思い入れ」は切り裂かれざるを得なくなります。

そして、これは、実は障害者のみに絡むことではなく、どの従業員に対しても同じことが言えます。

2. 視覚障害者の甘えの脱却

しばしば、視覚障害者の中には「自分は障害者だから」ということで、甘えの意識が根付いてしまっている人がいます。

「企業は弱者に対し手をさしのべるのが当たり前」といった障害を盾に取った特権意識は、放置しておくと行く末は職場環境の悪化や雇用関係の破綻につながります。

視覚障害者本人がどのような意識で仕事に向かおうとしているかは、その人の現在のスキルや能力よりも重要なポイントです。

このような意識の視覚障害者を雇用してしまった場合には、時間をかけて粘り強く本人の意識改革をはかる必要があります。

意識変革をして頂かない限り、その人がどんなにある分野で能力があったとしても、職場モラルを低下させる要因となり、チームや部署全体の戦力ダウンにつながります。

3. 業務適応は自己責任

 

上記の問題と密接な関係にあるテーマですが、本人の能力やその能力の業務への適応は本人自身の責任であるという自立心を育てる必要があります。

もちろん、会社はできる限りの措置をする必要がありますが、どのような措置をしたら良いのかなどについての提案も、本人から発せられるように仕向けるべきだと考えます。

(2) 視覚障害従業員を生かす業務分担

 

視覚障害者には目の見えるワーカーとは別の観点から手助けが必要な場合があります。また、独力でできても効率がよくない場面もあります。

一つ、取引先に対する企画書の作成を例にとって、どのような人的協力や業務分担を行えば良いのか考えて見ます。

1. 企画検討

企画内容を熟慮・検討します。

2. 書き起こし

検討した内容を自分にとってわかりやすい形で書き起こします。

全盲者の場合には、点字板や点字電子手帳を用いて、点字としていったん考えをまとめることもあります。

3. 文書作成

書き起こした内容を、今度は人が読んでも理解できる形式のデータ、つまりテキストファイル、ワード・ファイル、エクセル・ファイルまたはHTMLファイルなどに書き起こします。

この作業は一般にパソコンで行います。

4. データベース化

作成した文書を、共有ネットワークに上げ、社内データベースに組み込みます。

社内LANの端末として視覚障害者のパソコンも接続されていれば、独力で行えます。

また、小規模な会社では、複数の関係者に同時にメールで送信するという形もあります。

5.企画書作成

 

上記の文書を、レイアウトの体裁を整え、必要な個所に必要な図表や絵または写真などを織り込んで、取引先に提示できる企画書に仕上げます。

上の業務の流れのうち、1.から4.までは、IT環境が整備されていれば、間違いなく独力でできる作業です。

問題は5.です。

どの程度の体裁が要求されるのか、絵や写真を織り込む必要があるのかなど、書類の性質によって、あるいは視覚障害者といってもその視力の程度やITスキルのレベルはどの程度なのか等の要素によって、これを独力でこなせるかどうかが決まってくるでしょう。

しかしながら、業務としてこの作業を位置付けたとき、その青果物の質と作業効率が当然問われます。

この観点から考えると、たとえ全盲のスタッフでこれを独力でこなせる者がいたとしても、5.の部分は目の見えるスタッフに協力または業務分担させることをお勧めします。

もしもその全盲スタッフが非常に企画力のある人手あり、文章力にも長けているとすれば、自ら5.を行う間に、もう一つの価値のある企画を立案するに違いないと思うからです。

(3) アメディアの現状と私の失敗談

 

アメディアには、現在、13名の従業員がおりますが、そのうち、全盲の視覚障害者はフルタイムで開発に携わっている一人と、パートタイムで録音マニュアルの作成やホームページ関連の業務の一部を担っている職員一人の、計二人しかおりません。

従業員の総数はここ数年あまり大きく変化していませんが、一時期は視覚障害者従業員が7名いたこともあります。

この変化、つまり、私の雇用主としての失敗談をできる範囲でお話致します。

以上です。

株式会社アメディア

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