2006年6月2日(金)
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 本部 5階研修室
〒105-0022
東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワーにて
障害者雇用ニーズ
- 障害者雇用ニーズはない。
- 人材ニーズがある。
1. 中小企業にとっての障害者雇用ニーズ
現在、障害者雇用促進法における障害者法定雇用率は1.8パーセントである。
これは、従業員数が56人に達した段階で、一人以上の障害者を雇わなければならないという数値である。
よって、従業員数が55人以下の中小企業にとっては、特に障害者を雇いたいというニーズは生じない。
2. 中小企業の人材難
一方、中小企業は常に人材難にあえいでいる。
新卒の人達や若い人達は、よく知られている有名な大企業への就職を目指す。
そのため、中小企業が求人を出しても、なかなか良い人材が応募してくることがない。
3. 障害者の人材としての位置付け
障害は、一つの角度から見たときの現象である。
障害と業務の内容との関連性で考えるならば、その障害が必ずしも業務の障害にはならない場合もある。
そのように考えるならば、障害の特性をよく理解した上で、個々の障害者を一人の労働者として評価するならば、かならず彼らが戦力となりうる業務を見出したり、あるいは彼らが戦力になるような業務の体性を作ることができるはずである。
よって、法律的にはニーズが生じない中小企業であっても、人材の面から障害者雇用のニーズを引き出すことができうる。
このような形で実現する障害者雇用は、むしろ、本来あるべき姿だと考えられる。
障害者雇用阻害要因
1. 無知の阻害要因
障害を知らないというのが、まずは標準的な阻害要因だと考えられる。
とにかく、障害者はどんな風にして働いてもらえるのか判らないという場合である。また、その「判らない」は、基本的に否定的な角度から「わからない」という立場を取る。
もちろん、その障害が直接業務遂行に関係のある障害なら、業務に差し支える。
しかし、障害特性を理解すれば、その障害が業務遂行に関係のない分野の業務をあてがうことができる。
アンケートより
雇用経験のない159社のうち、36社(22.6%)が「障害者に適した仕事がわからない」と回答。
2. 大げさに考えすぎる阻害要因
これも、上の「無知の阻害要因」に近いが、むしろ、無知であることを自覚していないだけ改善しにくい。
言い換えれば、「先入観による阻害要因」といえるかも知れない。
障害者に働いてもらうためには、相当の施設や設備が必要、非常に充実したサポートが必要と考える場合である。
確かに、障害の種類に応じた適切な設備は必要だし、それなりのサポートも必要である。
しかし、それを大げさに考えすぎている経営者は決して少なくない。
アンケートより
雇用経験のない159社のうち、47社(30%)が「受け入れる施設、設備がない」と回答。
3. 人間関係的阻害要因
雇用主側からみれば、障害者は普段接したことのない、よく判らない人達である。
そのため、最初から労働力として考えにくいという場合がある。
外国人を雇い入れることに抵抗感を感じる経営者のケースとよく煮ている。
アンケートより
雇用経験のない159社のうち、56社(35.2%)が「障害者との接点がない」と回答。
4. 業務自体が少ないという阻害要因
これは、中小企業特有の阻害要因である。
10人以下のメンバーで営業しているような小企業のケースを思い浮かべていただきたい。
そのような小さな事業所では、一人のスタッフが何種類もの業務を掛け持ちしていて、何でも屋さんとしての従業員が求められる。
障害者は、できることはあっても平均すればできない分野が多いので、何でも屋には向いていない。
アンケートより
雇用経験のない159社のうち、63社(39.6%)が「雇用するだけの仕事がない」と回答。
5. 無関心という阻害要因
これがもっとも大きな阻害要因であり、且つ解決の難しい難問である。
2200社の東京中傷企業家同友会で障害者雇用アンケートを行なった結果、回収は215件、回収率は10パーセントに満たない。
中小企業のうち、90パーセント以上が障害者雇用に無関心だとすれば、感心を持ってもらえるようにするだけでも障害者雇用が大幅に改善しうる。
障害者雇用阻害要因に対する対応
1. 無知の阻害要因
無知であることを自覚している経営者は、啓蒙活動に応じ易い。
セミナーや学習会など、有効な企画を打てば、このグループの人達はいずれ障害者雇用を具体的に考えるようになる。
2. 大げさに考えすぎる阻害要因
このグループの人達は先入観を持っているため、目から鱗状態にさせる必要がある。
しかし、接点を拒否しない人達なので、良い企画などで積極的に接点を持っていくことが大切である。
3. 人間関係的阻害要因
これは、障害者との接点が少ないことから生じる課題である。
よって、「雇用」というキーワードを出さずに障害者と接することのできる場を提供することが大切である。
4. 業務自体が少ないという阻害要因
これは、会社に頑張って成長してもらうことが先決である。
5. 無関心という阻害要因
もっとも効き目のあるのは法律である。
法定雇用率1.8パーセントという枠組みのほかに、従業員数10名以上の企業はかならず一人以上の障害者を雇用しなければならないという法律ができれば、すべての中小企業は無関心ではなくなるだろう。
法的枠組みをドラスティックに変える以外では、障害者の良い働きで業績が上がっている企業の事例がより多く紹介されることであろう。