2007年11月16日(金)
第7回国際アビリンピック分科会1にて
私は、高校まで盲学校という障害者だけの学校で教育を受けてきた者として、これから社会に育っていく若い障害者の皆さんにキャリアアップしていくためのポイントをお話します。
できること、やれることをアピールしなければならない。
最初は、自己アピールをする段階です。
世間の人達はあなたの障害をほとんど知りません。あなたが何ができて何ができないのか、何が得意で何が苦手なのかも知りません。
これは無理解なのではありません。特殊な「障害」のことなど、知らなくて当然です。
私達障害者が働く場を得るためには、まずはどんな仕事ができるのかを具体的に自分でアピールしていく必要があります。
これは、就職前のみならず、就職後においても同様です。
職場内で自分のやれることを積極的にアピールすることによって適切な仕事が与えられ、やりがいのある職場生活を送ることができます。
頼み上手にならなければならない。
やれることをアピールする一方で、やれないこと、自分では効率の悪いことについては、周囲の人達に上手に手助けを頼む必要があります。
「上手に頼む」とは、
- 気持ちよくやってもらえること、
- やってもらっていることの意味を相手に理解・納得してもらうこと、
- やってもらっていても、自分が能力がないと思われないこと、
が必要です。
その秘訣は、
A.コミュニケーション上手になること
B.依頼相手の今の状況や得意・不得意を配慮すること
C.お返しに相手の手伝いをすること
です。
こうして、業務上での頼むこと、引き受けることがスムーズに回転し始めると、あなたは職場チームの一員として完全に組み込まれます。
業務として指示ができなければならない。
職場での実績が評価されると、部下が配置され、上司となります。
このときには、新しい課題として、仕事の指示を適切に出す必要が出てきます。
業務上の支持は、同僚に対する協力依頼とは性質の異なるものです。
やれることを自己主張するスタンスに偏りすぎている障害者は、何でも自分でやろうとしてしまい、上司としての適切な業務指示ができないことがあります。
上司になったら、自分ができることでも、自分がやるのではなく、部下にさせなければなりません。上司というのは、率いるチーム全体での生産性で評価されるからです。
一方、人に頼むスタンスに偏りすぎている障害者は、何でも人にやってもらおうとします。
また、やってもらうことは自分のサポーとというイメージが焼きついてしまっているため、「業務として指示する」というスタンスに断ち切れないことがあります。
このような人は、自分の職場内での役割をより明確に意識化するための心の改革が必要です。
このように、上司にステップアップするためには、1.の自己アピールをして自分のやれることを増やしていくことと2.の頼み上手になって適切に依頼するというスタンスをバランスよくこなす実践を経て人間として成長する必要があります。
尊敬する上司の指示なら喜んで従うけれども、気に入らない上司の指示はしぶしぶ従うという心の動きは誰にでもあります。
この心の持ち方の差が、業務効率の差になって現れてきます。
ですから、私たちは尊敬される上司にならなくてはいけません。