2003年9月12日
障害者就労支援機器関係セミナー
愛知県障害者雇用促進協会 日本障害者雇用促進協会愛知障害者雇用情報センターにて
株式会社アメディア 代表取締役 望月優
視覚障害者に効率の良い業務を遂行させるためには、適切な支援機器と業務でそれらをうまく使いこなすための訓練や研修が必要です。
[情報のやり取りがカギ]
目の見えない人と業務を進めていく上で、もっとも大切なのは、業務情報のやり取りです。
1. メールの有用性
全盲の人は印刷物を自分の目で読むことはできません。弱視の人はこれをルーペなどを使いながら、普通の人達よりもかなり苦労しながら読みます。
ところが、パソコンでやり取りする電子メールは、メール内容を音声で読み上げるソフトや画面を拡大するソフトなどにより、全盲者でも弱視者でも、ほとんど苦労なく読み、そして書いて発信することができます。
ですから、印刷物を配るのならばその元になっているデータをメールに添付して、FAXで短い内容を伝達するのならばその内容をメール本文に貼り付けてメールしてください。
2. 各種の機器とソフトウェア
視覚障害者は彼等に取って使い易い機器やソフトをそろえれば、かなり効率の良い事務をこなすことができます。
(1) パソコンとスクリーン・リーダー
パソコンは一般の人達が用いている通常のWindowsパソコンを使います。
全盲者の場合には、Windowsの状態を音声化するスクリーン・リーダーという種類のソフトが必須です。弱視の人でも、スクリーン・リーダーを利用して、画面の見にくさを補いながら操作することも少なくありません。
また、弱視者の場合には、視力や眼疾の度合いにもよりますが、画面表示を拡大するソフトを併用することもしばしばあります。
スクリーン・リーダーや拡大ソフトを利用することにより、訓練された視覚障害者の場合には、ワードやエクセルをある程度使いこなすことができます。
スクリーン・リーダーには、以下のものがあります。
- JAWS
- PC-Talker
- 95Reader
また、画面拡大ソフトには以下のものがあります。
- ZoomText
(2) インターネット関連ソフト
最近は、業務上インターネットを利用することは、業種を問わずかなり一般的になっています。
さらに、視覚障害者の場合には、電子メールについての説明でも述べましたが、インターネットを効率的に使うことによって業務に参画できるという側面も非常にあります。
インターネットにはホームページの閲覧と電子メールのやり取りがあります。
一般の人達の多くは、ホームページの閲覧は Internet Explorer、 電子メールのやり取りは OutLook というともにマイクロソフト社のソフトウェアを使用しています。
視覚障害者、特に全盲者の場合には、これらの作業を効率よく行うため、音声で使い易いソフトウェアが開発されています。
ホームページを閲覧するソフトには、次のものがあります。
- ボイスサーフィン
- ホームページ・リーダー
また、電子メール・ソフトには、次のものがあります。
- ユニメール
- マイメール
(3) 印刷物を読み上げるソフト
視覚障害者にとっての業務上のもっとも大きなハンディは、印刷物を読むことができないという点です。
ですが、この点においても、印刷物を読み上げる機器やソフトが既に開発されています。
次のようなものがあります。
・ 音声読書機
- よむべえ
・印刷物読み上げソフト
- ヨメール
- よみ姫
- よみとも
- マイリード
(4) 拡大読書機
弱視者の場合には、拡大読書機を用いることによって、印刷物の内容や図面を読み取ることができるようになります。
拡大読書機の選定に当たっては、本人の眼疾や見え方にマッチしたものを選択する必要があります。
拡大読書機は現在既に非常に多くの機種があります。
(5) 点字機器
点字を使いこなすことのできる視覚障害者に取っては、点字ディスプレイや点字電子手帳及び点字プリンタを導入して頂くことにより、さらに業務効率を上げることができます。
また、会議等の資料でも、自動点訳ソフトや上記の印刷物を読み上げるソフトをうまく使うことにより、現在ではほとんど手をかけずに点字印刷することもできます。
点字関連の機器やソフトには、以下のもの等があります。
点字プリンタ
- ジュリエット
- ロメオ
- ET
点字ディスプレイ
- ブレイルノート46X
・ 点字電子手帳
- ブレイルメモ
自動点訳ソフト
- EXTRA
・ 点字読み取りソフト
- ドット・リーダー
なお、上記のソフトウェアや機器の詳細に関しては、下記ページを参考にしてください。
3. 社内ネットワーク
社内でLANを用いている場合には、視覚障害従業員の端末パソコンもLANに接続してください。
接続して頂くことによって、社内の電子データが共有化でき、視覚障害従業員の仕事もほとんど周りの目の見える従業員と同じように行われるようになります。
なお、スクリーン・リーダーなどのいくつかの特別なソフトを使うため、ネットワーク環境に何か悪影響が出るのではないかと誤解される旨がしばしばあるようですが、端末パソコンのみで動作している音声化ソフトが、ホスト側に何らかの影響を与えるということはありません。