2005年11月18日
日本盲人職能開発センターにおける公園 レジュメ
経営者から視覚障害従業員に求めるべきこと
1. 戦力としての視覚障害者雇用
戦力として期待していることを伝える必要があります。
会社の戦力となることによって、長期的な雇用関係が成立します。
長期的な雇用関係は、他の従業員も納得できる処遇でもってはじめて実現できます。
仮に事業主が視覚障害者従業員に対して特別な思い入れがあったとしても、その人が戦力になっていない限り、やがてほかの従業員との人間関係の中でその「特別な思い入れ」は切り裂かれざるを得なくなります。
そして、これは、実は障害者のみに絡むことではなく、どの従業員に対しても同じことが言えます。
2. 特権意識からの脱却
しばしば、視覚障害者の中には「自分は障害者だから」ということで、甘えの意識が根付いてしまっている人がいます。
「企業は弱者に対し手をさしのべるのが当たり前」といった障害を盾に取った特権意識は、放置しておくと行く末は職場環境の悪化や雇用関係の破綻につながります。
視覚障害者本人がどのような意識で仕事に向かおうとしているかは、その人の現在のスキルや能力よりも重要なポイントです。意識が前向きな人はどんどん成長し、意識が後ろ向きな人は停滞するからです。
特権意識を持った視覚障害者を結果として雇用した場合には、時間をかけて粘り強く本人の意識改革をはかる必要があります。
意識変革をして頂かない限り、その人がどんなにある分野で能力があったとしても、職場モラルを低下させる要因となり、チームや部署全体の戦力ダウンにつながります。
「障害」とは恐ろしいもので、できないことの理由付けに使うのにもっとも好都合な要因です。しかし、そのような意識からの脱却がない限り、視覚障害者の戦力化は難しいと言えます。
3. 業務適応は自己責任
上記の課題と密接な関係にあるテーマですが、本人の能力やその能力の業務への適応は本人自身の責任であるという自立心を育てる必要があります。
もちろん、会社はできる限りの措置をする必要がありますが、どのような措置をしたら良いのかなどについての提案も、本人から発せられるように仕向けるべきだと考えます。
視覚障害従業員を生かす業務分担
視覚障害者には目の見えるワーカーとは別の観点から手助けが必要な場合があります。また、独力でできても効率がよくない場面もあります。
一つ、取引先に対する企画書の作成を例にとって、どのような人的協力や業務分担を行えば良いのか考えて見ます。
1. 企画検討
企画内容を熟慮・検討します。
2. 自分用のメモ
検討した内容を自分にとってわかりやすい形で書き起こします。
全盲者の場合には、点字板や点字電子手帳を用いて、点字としていったん考えをまとめることもあります。
3. 文書作成
書き起こした内容を、今度は人が読んでも理解できる形式のデータ、つまりテキストファイル、ワード・ファイル、エクセル・ファイルまたはHTMLファイルなどに書き起こします。
この作業は一般にパソコンで行います。
4. 情報共有
作成した文書を、共有ネットワークに上げ、社内データベースに組み込みます。
社内LANの端末として視覚障害者のパソコンも接続されていれば、独力で行えます。
また、小規模な会社では、複数の関係者に同時にメールで送信するという形もあります。
5. 企画書作成
上記の文書を、レイアウトの体裁を整え、必要な個所に必要な図表や絵または写真などを織り込んで、取引先に提示できる企画書に仕上げます。
上の業務の流れのうち、1.から4.までは、IT環境が整備されていれば、間違いなく独力でできる作業です。
問題は5.です。
どの程度の体裁が要求されるのか、絵や写真を織り込む必要があるのかなど、書類の性質によって、あるいは視覚障害者といってもその視力の程度やITスキルのレベルはどの程度なのか等の要素によって、これを独力でこなせるかどうかが決まってくるでしょう。
しかしながら、業務としてこの作業を位置付けたとき、その青果物の質と作業効率が当然問われます。
この観点から考えると、たとえ全盲のスタッフでこれを独力でこなせる者がいたとしても、5.の部分は目の見えるスタッフに業務分担させるのが妥当でしょう。
もしもその全盲スタッフが非常に企画力のある人手あり、文章力にも長けているとすれば、自ら5.を行う代わりに、もう一つの価値のある企画を立案するでしょう。
このように、業務はチームワークでこなすものです。
視覚障害者がチームの一員に入ったとき、その人の特性を理解して、チーム内でのパスがスムーズに通り、チーム全体としての業務効率が上がるような仕組み作りをするのが経営者であり、部署のリーダーの役割なのです。
生きがいのある人生に向けての心の持ち方
1. 前向きの考え方とは
問題を反省することよりも、今後どのように取り組んでいくかに重点をおいて考えます。
原因思考ではなく、解決思考で取り組みます。
2. 実行力の付け方
P = Plan
D = Do
C = Check
A = Action
のPDCAサイクルを早く回転させます。
そのためには、最初の Pで停まっていてはいけません。すぐにDに入りましょう。