2009年4月13日
デイジー横浜総会での講演(横浜市健康保険福祉センターにて)90分
感謝
大原さんから点字の手紙を頂きました。ありがとう!
今の自分がボランティアの皆さんの力添えによって存在していることへの感謝。
アドバイス
音訳活動を楽しく継続してください。
株式会社アメディア 代表取締役 望月 優
1. 私と読書
A.幼少期
1958年1月28日、静岡市生まれ。
生まれつきの視覚障害者。
6歳で完全失明。
静岡盲学校の小学部に入学。
盲学校入学後点字を学び、2学期頃には図書室の点字本が読めるようになる。
休みの日に、「イワンのばか」を1日で37ページ読んで、読む楽しみを覚えた。
そのとき、指がひりひりした。
「やんぼう、にんぼう、とんぼう」、「北極熊のムーシカ、ミーシカ」などを好んで読んだ印象が残っている。
B. 学業期
子供の頃は本と言えば点字だったが、小学部5年のときに初めてカセットテープレコーダーを買ってもらった。その頃は、カセットの録音図書はほとんどなかったので、カセットテレコは音楽を聴く道具だった。
中学3年のときにオープンリールのテープレコーダーを買ってもらい、日本点字図書館から発刊されていた「世界の動き」という月間雑誌を取り始めた。中学生の頃から、地理や社会に大変興味があったので、「世界の動き」という雑誌は大変面白かった。
高校は現在の筑波大学附属盲学校高等部に入学した。
中学までは図書と言えば点字本ばかりを読んでいたが、高校に入ると、テープ図書も聞き始めた。ほんの短い期間だけ、オープンリールのテープ図書を聞いていたと思うが、すぐに主流がカセットテープとなり、カセットテープ図書を聞き始めた。
当時、日本点字図書館が半減速というカセット録音方式を採用した。これは、1本のカセットテープに長く録音できるからだということだが、一般に販売されているカセットレコーダーでは聞くことができないということで、一部視覚障害者の間では大変不評だった。
私も、日点のカセット図書を聞くために、日点から半原則対応のカセットレコーダーを購入した。
それでも高校時代は、点字の方が多かった。
C. 学生時代
筑波大学附属盲学校の高等部から麗澤大学に入学し、がぜんカセットテープ図書を聞く比率が高くなった。
大学の一般教養の勉強は、ほとんどカセットテープで行なった。日本女子大学テープライブラリーにかなりお世話になった。また、麗澤大学の学生にも読んでもらった。
公共図書館を利用するようになり、都立中央図書館を始め、住んでいる地域の近くの図書館で対面朗読を受けるようになった。
この読書スタイルが就職後、アメディア設立後もしばらく続く。
D. 活字図書を読むようになって
私が本格的に活字の図書を読むようになったのは、2007年の秋から。
活字図書を本格的に読み始める前3年ぐらい、インターネット上で流通しているPDF図書を読みあさる時期があった。一時期、PDF図書の読書は私にとって大変参考になったが、Eブックと呼ばれるインターネット上のPDF図書はどれもアンダーグラウンドな内容のものばかりで、活字図書を読むようになって、ネット上のEブックよりも活字図書の方が内容が深いことを体感で知った。
活字図書を読むきっかけとなったのは、2007年3月に参加したジェームス・スキナーの成功の9ステップ・セミナー。ジェームス・スキナーという人がどのようにしてこのような考え方になったのかということに関心を持ち、ジェームス・スキナーが翻訳した「七つの習慣」を読んでその内容に大変感動した。
その後、ジェームス・スキナーが推奨している本や、その本の中に書かれている推奨図書などを読みあさるようになった。
2. 私が好んで読んでいる本
スティーブン・コピー著「七つの習慣」
- 信頼残高
- 刺激と反応の間のスペース
1. 主体性を発揮する。
2. 目的を持ってはじめる。
3. 重要事項を優先する。
4. Winwinを考える
5. 理解してから理解される。
6. 相乗効果を発揮する。
7. 刃を研ぐ。
ナポレオン・ヒル著「思考は現実化する」
ジェームス・スキナー著「成功の9ステップ」
1.決断
2.加速学習
3.健康とエネルギー
4.感情のコントロール
5.目的の明確化
6.時間管理
7.思い切った行動
8.アプローチの改善
9.リーダーシップ
- コミュニケーション
- 相乗効果
- 組織作り
アンソニー・ロビンス著「一瞬で自分の夢を実現する方」
人生で大切な5原則
1.感情のコントロール
2.健康
3.対人関係
4.お金
5.時間
- パートナーを愚妻と呼ぶか、神様からの贈り物と考えるか
- 感情は行動を促すアクションシグナル
- 目標が大きければ大きいほどやる気が出る。
- 適度なストレスがある方が人生は面白い
- ゴールの手前で棄権してしまう人が多過ぎる
- 行動を起こすからやる気に弾みがつく
- 頑張る理由のある人はいつも輝いている。
- 自分をリニューアルしつづけられる人は素晴らしい
朝のパワーアップクェスチョン
1、今の人生で「感謝できること」は何だろう?
2、今の人生で「楽しいこと」は何だろう?
3、今の人生で「幸福なこと」は何だろう?
4、今の人生で「打ち込めるもの」は何だろう?
5、わたしは「誰を」愛しているだろう?
「誰が」わたしを愛してくれているだろう?
どんな点がわたしを愛情豊かにしてくれるのだろう?
夜のパワーアップクェスチョン
今日は何を「与えた」だろう? どんな点で与える側にまわっただろう?
今日は何を「学んだ」だろう? どんな点で成長したのだろう?
3. 7対3の法則
皆さんは今幸せですか?
幸せな方は、これからの話をその状態を継続するためのヒントの一つだと思って聞いてください。
今幸せではない方は、これからの話を幸せを掴む秘訣だと思って聞いてください。
目標を持ってそれに向かって挑戦しつづけていると人は成長します。
皆さんの場合は、視覚障害者に図書に書かれている活字の情報を迅速且つ正確に伝えようという明確な目標があるわけですね。
「目標の明確化」は成功哲学の一番中心に位置する大切なポイントです。
成長しつつある自分が実感できると、人生が楽しくなります。
いけないのは、現状に満足しきってしまい、自分はこのままでいいや、と思うことです。
その状態は、進化の逆の退化への道に踏み込んでいます。
今の時代、皆が進歩・成長していますから、現状のままでよいという気持ちでは、現状を維持することさえ難しいのです。成長しよう、進歩しようという気持ちがあってはじめて、現状維持が可能になります。
ところが、現状が不満ばかりという状態はさらに不健全です。
不満ばかりの状態からは、進歩への具体的な行動が出ません。
心に不満が満ち溢れていると、周囲に対してもマイナスの気を発して、周りの雰囲気までをも悪くしてしまい、仲間やグループ全体のモティベーションを落とします。
成長状態を作り出すのは、7割型は満足しているが、後3割を改善したいという心のバランス状態です。
7割満足、3割進歩したい、これを私は7対3の法則と名づけました。
7割満足していれば、未達成の3割の部分は不満にはならず、前向きな気持ちで「これから歩むべき道」になります。
3割の「これから歩む道」は、進歩する余地でもあります。
進歩する余地、成長する余地を常に保ちつつ、目標に向かって一歩ずつ進んでいく、そのように自分の心の状態を常にコントロールしていれば、私たちは成長しつづけますし、その自分を感じるのが楽しくなってきます。
つまり、秘訣は、現在の自分の状態を常に7割型は肯定することです。
目標に向かっている状態であっても、一つだけ気をつけたいのは、以前の自分よりも成長しているのに、自分の目標値と現在の自分との位置が遠すぎて、自分をマイナスにみてしまうという状態です。この状態は、4・6だったり、3・7だったりします。つまり、自分自身に満足していない状態です。
この状態から不満が募ると、毎日が不満や自己否定的な考えにさいなまれるようになり、その心の状態が自分を退化への道へと引きずり込もうとします。
現状の自分と目標値とが遠すぎるという状態は、人と自分とを比較することからよく生じます。
人と自分とを比較してはいけません。比較した人がすばらしければ自分がだめなように思えますし、逆に比較した人が自分の目からはだめだなと感じれば、自分が思い上がる原因となります。
比較するのは以前の自分です。
以前の自分と今の自分とは違っていて良いのです。
以前の自分よりも成長している側面を見出したとき、今の自分に対する不満な面がある程度あったとしても、自分自身を肯定することができます。
このようにして、7対3の法則を自分の心の状態管理に採用してみてください。
自分を肯定する割合が7、進歩に向かって歩く道が残りの3です。
4. お子さんにも7対3の法則
ここにおられる皆さんの多くがお子さんをお持ちでしょう。
お子さんが何か大きな失敗をしたりテストの点が悪くて落ち込んでいるとき、強く叱ってはいけません。
もうすでに本人がその段階で落ち込んでいるのですから、ここで厳しく叱ったりすると、すでに4・6ぐらいの状態にあったのを3・7とか2・8の状態にまで落とし込んでしまうからです。
そうなると、お子さんは自分に自信をなくし、進歩するための行動がとれなくなります。
また、注意の仕方にも秘訣があります。
心理学では、意識レベルに5段階あると言われています。
1)環境レベル
2)行動レベル
3)能力レベル
4)信念・価値観レベル
5)アイデンティティレベル
の5段階です。
「今日の髪型は素敵だね」は環境レベルでの褒め言葉です。
「今日あなたは視覚障害者に手を貸したね。素晴らしいね。」は行動レベルの評価です。
「今日の料理はおいしかったよ。料理が得意なんだね」は能力レベル。
「あなたの考え方は筋が通っている」は信念・価値観レベル。
そして、アイデンティティレベルというのは、「人格レベル」ということができます。
この5段階の段階が高くなればなるほど、人の心の奥底に踏み込んだ段階になります。
ですから、より高い段階で評価されればより嬉しいし、けなされればより激しく傷つくのです。
上の四つの褒め方をあえて最高のアイデンティティレベルで褒めてみましょう。
「きみの髪型は素敵だね。ファッションモデルだね。」
「あなたは親切ですね。現代のマザーテレサですね。」
「今日の料理はものすごくおいしかったよ。きみは名コックだね。」
「あなたの考え方には筋が通っている。さすが会長さんだね。」
つまり、アイデンティティというのは、「私は○○である」という言葉で表現されるような「自分の独自の立場」なのです。
皆さんなら、「私は音訳者である」というアイデンティティを一つお持ちだし、多くの皆さんは「私は母親である」というアイデンティティをお持ちでしょう。このように、一人の人は複数のアイデンティティを持っているのです。
さて、話を元にもどしますね。
お子さんに注意するとき、人格を否定するような表現で注意してはいけません。アイデンティティに傷がつくからです。
「なぜあんたはいつも同じ失敗をするの?」
「なぜあんたはこんなにできないの?」
などは最悪の表現です。
「あんたはだめな子」というアイデンティティを刷り込んでいることになるからです。
人は成長していく中で、自分のアイデンティティを形成します。人格を否定するような叱り方は、「おれはだめだ、私はだめだ」というアイデンティティをつくらせます。自分で「おれはだめなんだ」と定義してしまうと、その人からは成長する可能性が失われてしまいます。
それでは、どのように対応すればよいのでしょうか。
- 失敗したとき(例えば、忘れ物をしたとき)
「あっ!また忘れ物をしちゃったね。じゃあ、どうしたら忘れ物をしなくなるか、お母さんと一緒に考えてみよう。」
そして、お子さんと少し意見交換し、お母さんはヒントは出しても答えは出さないようにします。そして、お子さん自身から改善策が出るように誘導します。
お子さんから改善策が出たら、まず、お子さんを褒めた上で、その改善策をこれから実行するように促します。
「あんたはいつもお姉ちゃんとして弟の面倒をちゃんとみている素晴らしい子なんだから、絶対にできるよ。今あんたが言ったことに気をつけてこれから頑張ろうね」
こんな感じです。
まず、お子さんを褒めることによって、お子さん自身の自己肯定度を7に引き上げます。心の状態が7まで回復したお子さんは、上3を目指す心のエネルギーが充電されて、自ら提案した改善策を実行していくことでしょう。
これは、良いアイデンティティを評価して心のエネルギーを蓄えた上で、課題に立ち向かう心構えを作ることになります。
- テストの点が悪かったとき
「あー残念。また算数が30点だったのね。じゃあ、どうしたら算数が得意になるのか、お母さんと一緒に考えてみよう。算数ができるようになる策戦、『算数攻略策戦』を一緒に考えよう」
そして、お子さんと意見交換します。お母さんは「勉強しなさい」などとは言わず、お子さんから具体的な行動目標が出されるように誘導します。
お子さんから具体的な行動目標が出たら、「いつもあんたはそう言っているけど、何もやってないじゃないの」などとは決して言ってはいけません。
ここでも、まずお子さんを褒めます。
「あんたは野球が得意で素晴らしいピッチャーなんだから、算数だって今あんたが言ったとおりに勉強すればきっとできるようになるよ。野球の練習で疲れているだろうけど、お母さんも応援するから頑張ろうね」
こんな感じでしょうか。
自分の良いところを褒められて自己肯定度が上がった状態ではじめて、進歩への具体的な行動が取れるようになります。
野球と勉強というように、立ち向かう課題とは関係のないことでも、プラスのアイデンティティを評価して心のエネルギーを高めておけば、課題にも立ち向かう気力が満ち溢れてきます。
これが7対3の法則の実践例です。
最後に、お子さんとこのような話をするとき、お母さんはにこやかでいてくださいね。
言葉でしかっていなくても、口調や表情が厳しかったら、もうしかっていることになります。
人間のコミュニケーションは内容が7パーセント、口調が38パーセント、残りの55パーセントは態度だといわれています。
態度が厳しかったら、もうそれは怒られていると感じます。
口調が厳しかったら、これも怒られていると感じます。
態度が堂々としていて穏やかで、口調が明るくて表情がにこやか、そんな状態を作るには、お母さん自身の心の状態が良い状態でないといけません。
褒めてくれる人がいなかったら、自分で自分を褒めてください。あるいは、毎日の生活の良い点に心の焦点を当てて、自分の気持ちを明るくしてください。アンソニー・ロビンスの朝のパワーアップ・クェスチョンを実行すると本当に心が明るくなります。
このように、その良い心の状態を常に保ちつづける秘訣も7対3の法則なのです。