2009年4月28日
東京中小企業家同友会 世田谷支部総会
北沢タウンホール スカイサロン にて 75分
東京中小企業家同友会 障害者委員会 委員長
株式会社アメディア 代表取締役望月 優
一人で創った会社からみんなの会社へ
本日は、同友会での学びと自己啓発の学びで会社が良い回転になりはじめているお話をします。
1. アメディアの略歴
1987年12月に「コミュニケーションサービス」という屋号で視覚障害者向けのパソコンのサポート販売を一人ではじめる。
1989年2月に北区中十条で株式会社アメディアとして法人登記。3月に一人目の社員(視覚障害者)を雇用し、二人体制となる。
その後、徐々に社員数も増え、1991年には米国からの点字プリンタの輸入販売を開始する。
1995年4月に現在地の新宿区西早稲田に移転。
1996年9月に印刷物を読み上げるパソコン用のソフト「ヨメール」を発売し、97年6月期の売上が2倍に伸びる。
その後、会社を拡張するが売上が伸びず、赤字状態が一気に拡大し、体質化する。
2002年12月に同友会に入会した頃は、助成金なしには運営できない1輪車操業状態。
同友会 入会後の業績の推移
期 | 年月 | 売上高 | 経常利益/損失 |
---|---|---|---|
15 | 2003年6月 | 153187千円 | △14351千円 |
16 | 2004年6月 | 163879千円 | △9250千円 |
17 | 2005年6月 | 214708千円 | △7368千円 |
18 | 2006年6月 | 227337千円 | 6761千円 |
19 | 2007年6月 | 209581千円 | △592千円 |
20 | 2008年6月 | 264184千円 | 12319千円 |
21 | 2009年3月(第3四半期まで) | 239453千円 | 12590千円 |
2. 同友会暦
2002年11月:11研分科会にて自社の福祉ビジネスについて語る。
2002年12月:同友会・豊島支部に入会。
2003年11月:同友会文京支部の経営指針1泊セミナーに参加。
2004年3月:同友会・豊島支部例会にて自社の経営体験を講演。
2004年5月:第1期豊島経営塾に参加。以後、第3期まで3年間続けて参加。
2004年10月:福島県石川町での第12回前谷障害者問題交流会の分科会で経営体験発表。
2004年11月:東京同友会経営基礎講座で学ぶ。
2005年4月:東京同友会・障害者問題委員会の委員長に就任。
2005年6月:同友会研修で同友会について学ぶ。
2006年9月~12月:第29期経営指針成文化セミナーで学ぶ。
以後、30期と31期はサポーターとして参加。31期は副社長と社員一人が参加。
2007年9月:目黒支部例会にて「人を幸せにしないビジネスはない」のタイトルで経営体験発表。
2007年10月:神奈川同友会障害者委員会準備会で講演。
2007年11月:第14回障害者問題全国交流会の第1回実行委員会。実行委員長に就任。
2008年9月:明治学院大学を会場に第14回障害者問題全国交流会。
3. アメディア社内の変化
アメディアは暗い会社でした。
社員は皆デスクに向かって静かに事務作業をしながら電話を待ちます。
電話がかかってくると、静かなトーンで対応し、お客様の用件を受けます。
アメディアは電話での問い合わせや注文が多い会社なので、同時に複数の社員が電話対応しているときには、オフィス内がにぎやかなときもありましたが、社員同士の会話は少なく、電話がないときには沈黙オフィスでした。
また、プログラム開発をしている開発スタッフも同じオフィス内にいるので、なるべくオフィス内では無駄話をしないようにすること、お客様と電話で会話するときにもなるべく小声で話すよう仕向けていました。
当時は、私が話があって社員を会議室に呼び出すと、いつも社員は緊張していました。何か小言を言われるのではないかと疑心暗鬼になっていたと感じます。
ところが、今は、社員を会議室に呼び出しても、以前の緊張した雰囲気はなく、喜んで会議室にきてくれるようになりました。
小言ではなく、仕事の相談だろうという連想が社員の標準的な意識になったのだと思います。
すると、私の方も何か相談事や個別の意見を聞きたいときに社員を会議室に呼び出すことがだんだん気楽になってきて、気軽に声を掛けられるようになりました。
私のスタンスの変化としては、
これまで、オフィス内ではなるべく静かにしようというスタンスを取っていたのを切り替えて、「社員同士、わからないことがあったらどんどん会話して課題を解決してください。」というスタンスに変えました。
すると、社員間でのコミュニケーションも活発になり、仕事の連係もスムーズになってきました。
さらには、社員のお客様に対する電話対応の雰囲気も明るくなり、お客様との対立ケースも徐々に減少してきました。
この体質変化によって、私と社員、社員間そして社員とお客様とのコミュニケーションが活発になりました。
コミュニケーションが取りやすい環境から建設的な意見交換が生まれ、有効な意見交換から適切な判断に繋がり、適切な判断からできることの上限イメージが上がり、できることのイメージアップから私の掲げる高い目標に対しての現実感が社員の心にも伝わってきたと思います。
もう一つ、私の社員に対するイメージが上がりました。
同友会に入会した当時、アメディアの製品開発部隊の作業はカタツムリのように遅く、資産勘定の「ソフトウェア」の額がどんどん膨れ上がっていく状態でした。
この事態に対して、私は我が社の開発スタッフの能力が大変低いと感じていました。
しかし、私と開発スタッフ、そして開発スタッフ同士のコミュニケーションがよくなるにつれて、絡み合っていた毛糸が少しずつほぐれていくように、徐々にではありますが、開発のスピードが上がってきました。
私は、この事態を経験して、私自身が開発スタッフの力を過小評価していることに気付きました。
過小評価せずに、より大きな期待を表明し、具体的に進む方向を活発なコミュニケーションで常に与えつづけていれば、我が社の開発スタッフにも徐々にエンジンがかかってくる、そして成長してくるということを今感じています。
これらの結果、創業時からの念願の目標だった「会社の黒字体質化」がようやく昨年度に実現したと考えています。
また、今年から始めたグループ討論が、社員からいろいろな意見が出る基盤を少しずつ強化しています。
4. 努力型から感謝型へのパラダイム転換
同友会の学びの中で、経営をする中でもっとも大切なのは「経営理念」だと言われます。そして、その経営理念を社内に浸透させ、社員と共有することが大切だと学びます。
私は、2003年の秋に文京支部の経営指針セミナーに参加したのが、経営指針を学びはじめた最初です。
このとき、奥長 先生に学ぶ機会を得たのですが、自分がいかに未熟なのかということを痛感させられました。
その後、2006年に東京同友会の経営指針成文化セミナーに参加し、その後も2年間、経営指針成文化セミナーのサポーターを務めています。
経営理念の社員との共有はまだまだアメディアにとって発展途上の課題ではありますが、会社の雰囲気が明るくなって、見通しが非常によくなったように思います。
それまでは、経営理念を作るところまでは合点がいったのですが、浸透させる、共有するというところまではなかなか具体的なイメージができませんでした。
サヤカの猿渡さんの実例などでは、修羅場を経ないと実現しないように思えます。
「経営理念の共有」の状態へと進むための具体的なイメージが着き始めたのは、自己啓発分野での勉強をし始めて、自分自身の変化すべき方向性が見えてきてからのことでした。
2007年3月に成功の9ステップのライブセミナーに参加した後、私は、私自身の性格を思いっきり変えようと試みました。
このセミナーは、私自身の心を協力に前向きに矯正する役割を果たしました。
もともと私は落ち着いた暗い性格で、明るい性格の人を「能天気」と感じるきらいがありました。それを、自分自身がどのぐらい「能天気」になれるか挑戦しようという気になったのです。
朝礼や終礼のときにもできる限り大きな声、明るい声でみんなに声をかけるようになりました。
自分が話をするときにも、いつもにこやかで、明るい雰囲気の口調と声で話すよう明確に意識し始めました。
それでも、しばらくの間は社内の雰囲気はあまり変わりませんでした。むしろ、私が一人浮いているような雰囲気を感じました。
しかし、私はあきらめませんでした。
これを明るい気持ちで頑張って続けました。
もともと口が回らないことがよくあり、発声方法もうまくないのであまり大きな声が出ません。大きな声を出そうとすると怒鳴り声になってしまい、明るい大きな声(笑顔声)になりません。
そこで、元社員で今女優になっている者がいるので、彼女とそのパートナーの男優にお願いして発声練習と滑舌訓練の方法を教わり、毎朝社員が出社する前にこれを行なって、朝礼を迎えるようにしました。
こんなことを繰り返す中で、多分、私の口調が明るくなり、それが社員にとっても自然に聞こえるようになってきたのでしょう。
いつしか私の浮き方は徐々に社員の中に自然なものとして受け入れられるようになり、会社全体が明るく盛り上がった雰囲気に変わってきました。
そして、会議室に呼び出される社員の緊張感も徐々に取れてきました。
2007年11月29日の日記に、以下の記述があります。
--- 望月優の日記から ---
人生の質ランキング
Aランク:にこにこしながら努力する
Bランク:にこにこしながら努力しない
Cランク:苦虫をつぶしながら努力する
Dランク:苦虫をつぶしながら努力しない(不平、不満を持った状態、人のせいにする状態)
BとCは微妙だが、心の状態が人生を造っているので、心の状態が良い、つまりにこにこしていることの方が努力して進歩することよりも優先である。
自己啓発分野で知られるアンソニー・ロビンスやジェームス・スキナーは、人生の成功要素として、「感情のコントロール」を非常に重視しています。
感情の質が人生の質だといっても過言ではありません。その考え方が私の心に落ちて、上記のような日記になりました。
アンソニー・ロビンスが教える人生の最重要事項
1)感情のコントロール
2)健康
3)人間関係
4)お金
5)時間
以前の私は、「にこにこしながら努力しない」なんてとんでもない生き方だと考えていました。
どんなに苦しいことがあっても、歯を食いしばって必死に頑張る人生こそ、人間のあるべき姿だと思っていました。
活躍する障害者を表現するとき、「障害を克服して」とか「障害を乗り越えて」といった表現がよく用いられていますが、私の以前のパラダイムは、それらの表現にぴったりでした。
ですが、私のパラダイムは完全に転換しました。
2008年の年頭に立てた私の新年の抱負は、
- 穏やかな心ですべての自体を受け止める。
- にこやかな態度であらゆる人に接する。
でした。
そして、2009年の抱負は、
- 思いを実行する。
- お金持ちになる。
- 普通のことに感謝する。
です。
このようなステップを経て、私のパラダイムは努力型から感謝型へと変わりました。
どんな自体に対しても感謝する気持ちを持とうとすることによって、「きりきり頑張る」という気持ちがいつしか薄らぎ、これまでと同じことをこなしているのに、心がとても楽になりました。
普通の自体や普通の物事に感謝することによって、これまで「頑張ってやってきたこと」が、頑張らなくても自然にすーっとやっていけるようになりました。
アンソニー・ロビンスやジェームス・スキナーは、
「人間は、痛みを避けて快楽を求める動物」だと言います。
これまでの私は自分の努力を痛みと感じながら頑張ってきたのですが、どうやら、今はあらゆる物事に感謝の念を持つことによって、努力が快楽に変わったようです。
そして、その私の無理をしないで明るく感謝しながら生きているスタンスが、社員の心をも明るくし、社内のコミュニケーションの活発化に貢献していると感じます。
私が学んだ自己啓発本
ナポレオン・ヒル 「思考は現実化する」
スティーブン・コビー 「七つの習慣」
ジェームス・スキナー 「成功の9ステップ」
アンソニー・ロビンス 「一瞬で自分の夢を実現する方」
5. 前向きな気持ちを無理なく持ちつづけられる7対3の法則
アメディアでは、精神障害の方を雇用しているのですが、彼から人生を切り開く大きなヒントをもらいました。
アメディアでは「週刊福祉情報」というメールマガジンを毎週木曜日にまぐまぐから配信しているのですが、2005年の2月に、新年度からその編集と配信を行なう人をパートで採用しようということになりました。
当初、メルマガの編集なので在宅でもできるということで、「在宅でやってくれる障害者」を探し始めました。
その話を障害者委員会のときにしたところ、板橋支部会員のJHC板橋会のメンバーから「ちょうど良い人がいる」というお話を伺ったので、早速面接しました。
私の方ではこのメルマガの編集の仕事だけを考えていたので、さほどの業務量ではないので、在宅でという話をしましたところ、本人もケースワーカーの人も通勤させて欲しいということでした。
これまで勤めに出ていないので、良い生活習慣を身に付けるためにも通勤したいというのです。
そこで、当初は研修という形できてもらい、4月から火曜日と木曜日の午後にきてもらって「週刊福祉情報」の編集と配信をしてもらうことにしました。
そうこうしているうちに、メルマガの編集にも慣れ、時間が余るようになったので、ホームページの作成方法を勉強してもらって、ある程度できるようになってから、少しずつホームページ制作も手伝ってもらうようになりました。
さらに、当時流行り始めていたブログにもアメディアとして取り組もうということで、ライブドアとか楽天などのブログを利用するだけでなく、アメディア独自にブログサイトを立ち上げるための講習会に勉強に行かせた結果、ムーバブルタイプというブログ・システムを使って自社専用のブログサイトを立ち上げて管理することができるようになりました。
このように、精神障害の彼は、通勤することによって、メルマガの編集だけでなく、どんどん業務範囲を広げてきました。できることが増えてきたので、もちろん来てもらう時間数も徐々に増やして行きました。
さて、彼はそれ以後もどんどん成長して業務範囲をさらに広げ、今アメディアでばりばり働いてくれているのですが、その詳細はここでは省略させて頂いて、彼の成長から気付きを得た7対3の法則の話をさせてください。
精神障害の彼を雇用した直前の2005年1月から、「成長評価シート」というものを使っての社員の評価制度をスタートしていました。
これは、2004年11月に同友会の経営基礎講座で賃金を決めるための評価制度として学んだことをすぐに実践に移したものです。
さて、「成長評価シート」では、まず社員各自がそれぞれの評価項目に対して自己評価をつけます。その後で、直属の上司の評価、そして社長の評価を行い、最後に部長職以上のメンバーで評価会議を行なって最終的な評価点を確定します。
この評価制度を運用する中で、精神障害の彼は他の社員よりも自己評価が随分低いことに気付きました。
彼は確かに成長しているけれども、あるとき突然自己嫌悪に陥り、会社に出てこられなくなる危険性を感じていました。
というのは、面談で彼を褒めても、「社長、本当のことを言ってください。僕はまだまだダメなんです。そんなに良い評価はおかしいです。」といった具合で、こちらの褒め言葉を素直に受け止めてくれないのです。
彼は1年ごとに契約を更新しているのですが、2回目の更新のとき、「自分はこのままで良いのだろうか。会社に迷惑をかけているのではないだろうか」という不安に陥り、紹介してくれたJHC板橋会に相談に行ったことがあります。
このときは、JHC板橋会のケースワーカーと彼・本人、そして私と副社長の4人で会談して、彼が十分に活躍していることを伝えたところ、ようやく契約更新してくれました。
このことから、私は、自己評価の低い社員はいつも同じような危険性を抱えているのではないかと思うようになりました。
成長評価シートの自己評価欄で社員の心の状態が読み取れます。
実際、彼以外の社員でも、自己評価が以前よりも目だって低くなった社員は、働く意欲が衰えているということに気付きました。
そこで、私は、社員の自己評価をなるべく高めるために、おりに触れて社員とともに喜んだり、褒めたり感謝の言葉を掛けるようになりました。
「社員を褒める」ということがよく言われますが、もちろん褒めることもしますが、彼との体験で納得の行かない褒め方は受け入れられないことを学んだので、何か良いことがあったときに一緒に喜ぶことにしました。
喜ぶ、感謝するの二つをまず優先して、「褒める」を織り交ぜるようにしました。
一緒に喜ぶ例
- 業者向けのFAXの一斉送信をして、3件から返事がきたとき
「おーっ!これで3社との協力関係が強化されるね。○○さん、やったねえ!」
その結果、社員各自がそれぞれ自信を取り戻し、会社の人間関係がよくなり、仕事がスムーズに回るようになってきました。
精神障害の彼も、この1年間の躍進振りには素晴らしいものがあります。何か会社で取り組まなければならない課題が出ると、自ら率先してその担当を引き受けるようになりました。
なお、成長評価シートに附属する「成長評価シート・マニュアル」は、目指すべき社員像を記したマニュアルです。
次に、逆のパターンについてもお話しましょう。
自己評価が高すぎる社員は目標が低く、今の自分に満足しきってしまっているので、成長する可能性がほとんどないということです。
そこで私が感じ取ったのが、自己肯定度7割、まだまだ頑張らなければと思う点が3割、つまり、7対3の法則です。
目標を持ってそれに向かって挑戦しつづけていると人は成長します。
「目標の明確化」は経営者にとっては「経営指針」です。
成長しつつある自分が実感できると、人生が楽しくなります。
いけないのは、現状に満足しきってしまい、自分はこのままでいいや、と思うことです。
この状態は自己肯定というか現状肯定度が高すぎて、進歩の余地がありません。
この状態は、むしろ退化への道に踏み込んでいるといっても過言ではありません。
今の時代、皆が進歩・成長していますから、現状のままでよいという気持ちでは、現状を維持することさえ難しいのです。成長しよう、進歩しようという気持ちがあってはじめて、現状維持が可能になります。
ところが、現状が不満ばかりという状態はさらに不健全です。これは、4対6だったり3対7だったりする状態です。
不満ばかりの状態からは、進歩への具体的な行動が出にくくなります。
周りに不満な状態は、自分自身が成長しないだけでなく、周囲に対してもマイナスの気を発して、周りの雰囲気までをも悪くしてしまい、仲間やグループ全体のモティベーションを落とします。
一方、自分自身に不満な状態はウツやひどい落ち込みの状態をもたらします。
成長状態を作り出すのは、7割型は満足していて、後3割を改善したいという心のバランス状態だと私は感じ取りました。
7割満足、3割進歩したい、これを私は7対3の法則と名づけました。
7割満足していれば、未達成の3割の部分は不満にはならず、前向きな気持ちで「これから歩むべき道」になります。
3割の「これから歩む道」は、進歩する余地でもあります。
進歩する余地、成長する余地を常に保ちつつ、目標に向かって一歩ずつ進んでいく、そのように自分の心の状態を常にコントロールしていれば、私たちは成長しつづけますし、その自分を感じるのが楽しくなってきます。
つまり、秘訣は、現在の自分の状態を常に7割型は肯定することです。
6. 人と自分とを比較することの功罪
社員と面接していて、自己評価がひどく低い社員の中に、ほかの社員と自分とを比較している人がいることに気付きました。
以前の自分よりも成長しているのに、自分の目標値をほかのよくできる社員に置いているため、自分の目標値と現実とが遠すぎて、自分をマイナスにみてしまうという状態です。
この状態は、4対6だったり、3対7だったりします。つまり、自分自身に満足していない状態、自分に厳しすぎる状態です。
この状態から自分自身への不満が募ると、自己否定的な考えにさいなまれるようになり、その心の状態が自分を退化への道へと引きずり込もうとします。
このことから、人と自分とを比較してはいけないことを学びました。
さらに付加えるならば、比較した人が自分の目からはだめだなと感じれば、自分が思い上がる原因となります。
ですから、基本的に人と自分とを比較するのはよくありません。
ですが、良い意味で誰かを目標にして生きているという人もいますね。それを私なりに分析したところ、それは、その人を尊敬しているときだということに気付きました。
人と自分とを比較することがプラスになるケースは、比較の相手を尊敬しているときです。尊敬する相手なら、相手の状態は自分にとって尊敬すべき高い目標であり、決して自分を卑下する要素にはなりません。
結局、
競争的に人と自分とを比較すると、良いことはない。
ということに気付きました。
スティーブン・コビー氏は「七つの習慣」の中で「WINWINを考える」ということを言っていますが、確かに「WIN LOSE」のパラダイムでは成長し続ける自分を作れない、あるいは作りにくいということを感じ取りました。
結局、本来、比較すべきなのは他人ではなく、以前の自分です。
以前の自分と今の自分とは違っていて良いのですし、よりよく違っているべきなのです。
以前の自分よりも成長している側面を見出したとき、今の自分に対する不満な面が多少あったとしても、自分自身を肯定することができます。
また、未来の成長した自分をイメージすることによって、明るい気持ち、前向きな気持ちで心に負担のかからない自然な努力が促進されます。
このようにして、7対3の法則を自分の心の状態管理に採用してみてください。
自分を肯定する割合が7、進歩に向かって歩く道が残りの3です。
7. 社員の自己実現を目指して
2006年に第29期の経営指針成文化セミナーに出たとき、経営理念を作るプロセスの中で、
「どんな会社にしたいのか?」という質問が出ました。
これに対して、私は「社員が自己実現できる会社」と答えたところ、サポーター役のリセンの桜井さんがえらくこの言葉に反応してくれました。
ですが、当時の私にとって、まだ言葉が浮いている感じで、ならば、具体的に何をどうすれば良いのかというソリューションはありませんでした。
もともと、「自己実現」というキーワードは、少し前に勉強したマズローの5段階欲求説から思い描いたものでした。
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 仲間作り、人間関係の欲求
- 自我の欲求
- 自己実現の欲求
の5段階の頂点に立つのが「自己実現」です。
つまり、自己実現を達成している状態が、もっとも高いレベルの欲求が満たされた状態、つまり最高の幸せの状態というわけです。
私の目標カードには、
- 年商3億突破
- 累損完全一掃
- 社員の自己実現
という三つのフレーズが書かれています。
上の二つは今期で達成できる見通しです。
そして、三つ目の「社員の自己実現」は、私がアメディアの社長をしている間、ずっと目指しつづけなければならない永遠のテーマだと思っています。
そして、3年前には、これをどうやって目指していいのかがかいもく検討がつきませんでしたが、今はこんな風に考えています。
まず、自分の心を7対3の法則で常に良い状態に保ち、進歩・成長しつづけます。
次に、社員一人一人の心の状態に気を配り、各自の心の状態が7対3の状態になるように声をかけ続けます。
声の掛け方は、
- 一緒に喜ぶ
- 感謝する
- 褒める
の3通りです。
そして、普通のことを一緒に喜び、普通のことに一緒に感謝して、それら普通のことが経営理念に則して行なわれていることを社員とともに分かち合って喜びたいと思います。
まだまだ私もアメディアも発展途上ですが、今後は私の仮説であるこの7対3の法則を実践していきたいと考えています。
皆様も、自分自身を7対3バランス状態に保つことができたなら、今度は社員や家族など、周囲の人々の心の状態が7対3になるように褒めたり感謝したり、そして共に喜んだりしてみてはどうでしょうか。
最後に、成長評価マニュアルをご覧ください。
E. 笑顔で元気な挨拶と返事
明るく元気な挨拶は、自分の心と周りの雰囲気を明るくします。
最高の笑顔で元気な挨拶をしましょう。
G. 心の状態管理
心の状態は私生活のみならず、仕事の質にも大きな影響が出ます。
心の状態は環境に左右されるように思えますが、出来事が起きたときに一拍間を取って気持ちを落ち着けることにより、自分自身で制御することができます。
怒り、不満、落ち込みなどのマイナスの感情が襲ってきたときに、すぐに反応行動に出ず、間を取るように心がけてみてください。
評価指針:
10.周りの人に感謝して仕事するようになって不満や怒りを感じることがなくなった、元気な強い心の状態で毎日の仕事ができている、など
8.不満や怒りを感じることもあったが、物事をプラス方向に解釈しているのでそれらを表に出すことはなかった、いつも明るく前向きにと心がけているので、困難はあっても業務は順調に進められている、気持ちがふさぐことがあるが、人に相談したりストレス解消ですぐに復活している、など
E. お客様の立ち位置に歩み寄った対応
お客様の立場や気持ちを理解することに心を込めましょう。
事実としての質問への解答は調べれば誰でもできます。
お客様とのコミュニケーションにおいては、事実も大切ですが、お客様の気持ちはもっと大切です。そして、そのお客様の気持ちは、現在のお客様が置かれている状況から発生しています。
ですから、
- お客様の現状をコミュニケーションの中から把握する(お客様の気持ちを害さないように最善を尽くしてください)、
- 把握した現状からお客様の気持ちを理解する、
- お客様の気持ちを緩和させる方向で具体策を提案する、
といったような、心を思いやった行動が大切です。
これらは、すべて私が一人で書いたものです。
その意味で、まだ社員みんなと共有できているとは言えません。
以前、今副代表理事の豊島支部の河原さんの経営するローヤルエンジニアリングで、社員がみんなで議論して作った行動基準があるということを伺いました。
アメディアも、これを見習って、私が一人で決めた行動規範ではなく、みんなでの意見交換を経た行動指針を作りたいと考えています。
「みんなの会社へ」を目指した活動は、これからも磨きをかけて行きたいと思います。
「みんなの会社へ」という努力が、会社の基盤を強くしていくと確信しています。
ご清聴ありがとうございました。